
先日、町内の集まりで、空調の話題になり、表題のような疑問を投げかけられました。
分かりやすく解説することが出来なかったので、ココにまとめてみました。
なぜ“火で冷やせる”の?
「冷やすのに、どうして火を使うの?」
この問いに明確に答えられる人は、設備技術者でも意外と少ないかもしれません。
これを行う吸収式冷凍機は、ガス燃焼や蒸気熱等を利用して“冷たさ”をつくる冷房機。
電気式(圧縮式)と異なり、モーターを使わずに「熱と吸収の力」で冷媒を循環させています。
吸収式冷凍サイクルの全体像
吸収式冷凍機は、4つの主要な機器で構成されています。
それぞれが熱を受け渡しながら、冷媒(水)をぐるぐる循環させています。
- 再生器(リジェネレーター)または発生器(ジェネレーター)
ガスの燃焼熱や蒸気熱等で、臭化リチウム溶液(吸収液)を加熱。
溶液中の水(冷媒)が蒸発して水蒸気になります。
吸収液を濃く再生し、水蒸気を発生します。 - 凝縮器(コンデンサー)
発生器から来た高温の水蒸気を、冷却水で冷やして液体に戻します。
このときの放熱は冷却塔へ送られます。 - 蒸発器(エバポレーター)
凝縮した水を減圧された空間に送り込みます。
圧力が低いため、水は5℃前後でも蒸発し、周囲の熱を奪います。
→ ここで“冷水”がつくられます。 - 吸収器(アブソーバー)
蒸発器で発生した水蒸気を、臭化リチウム溶液が吸収します。
この吸収反応によって蒸発器側の圧力が低下し、減圧状態が維持されるのです。
吸収によって発生する熱は、冷却水で外に逃がします。
吸収液は再び再生器(発生器)へ戻り、加熱によって水蒸気を追い出し、再生されます。
分かりやすいイメージ図が、川崎冷熱工業のWebサイトに掲載されていましたので、参照ください。
https://www.khi.co.jp/corp/kte/product/chiller/principle/
吸収液が果たす“コンプレッサーの代役”
吸収式冷凍機の最大の特徴は、機械的な圧縮機を持たないことです。
ターボ冷凍機では、圧縮機が冷媒ガスを吸い込み、圧縮・膨張させて冷却を実現します。
一方、吸収式ではこの「吸い込み(減圧)」の仕事を、吸収液そのものが化学的に行うのです。
臭化リチウム溶液は非常に強い吸湿性を持ち、水蒸気を取り込むことで液中に“吸収”します。
この吸収作用によって蒸発器の圧力が低下し、冷媒水が低温で蒸発できる状態が保たれます。
つまり、
吸収液は「化学反応によって減圧を生み出す、静かなコンプレッサー」
と言えます。
実際、振動や騒音もターボ冷凍機より吸収式冷凍機の方が小さいです。
この化学的な吸引作用が、吸収式冷凍機の心臓部にあたります。
ガスの熱が“冷たさ”に変わる流れ
- ガス燃焼や蒸気熱等で吸収液を加熱し、水蒸気を発生(再生器・発生器)
- 水蒸気を冷やして液化(凝縮器)
- 低圧下で再び水を蒸発させ、冷水を作る(蒸発器)
- 水蒸気を吸収液が吸い込み、圧力を保つ(吸収器)
- 吸収液を再加熱して再生(再生器・発生器)
熱エネルギーによる蒸発 → 凝縮 → 低圧蒸発 → 吸収 → 再生 というサイクルの中で、
結果的に、燃焼の熱が“冷たさ”へと変換されるわけです。
まとめ
吸収式冷凍機は、ガス燃焼や蒸気等の熱を利用しながら、吸収反応によって減圧を生み出す装置です。
そのため、工場で出る余分な廃熱の利用などの省エネ運用も可能になります。
“火で冷やす”という逆説的な現象の裏には、
化学的な作用による熱エネルギーの循環技術が隠れていたのですね。
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